吉田つねひこ「政治が視えるメルマガ」の第82号です。
このメルマガでは、国会の流れ、政策の動き、私の活動などをお伝えします。
テーマ : 保 守 を 考 え る
-その1― 《合従連衡》
~はじめに~
前号まで「日本の医療制度を名実ともに世界一にするために」というテー
マで論じさせていただいておりましたが、昨年7月に参議院議員選挙と東京都
知事選挙がありましたので、今号より、数稿に渡り政治的なお話を少しばか
り挟ませていただきたいと思います。
■合従連衡
昨年7月10日に第24回参議院議員通常選挙が行われました。改憲勢力が3分
の2を獲得できるかが一つの焦点であり、また、全国に32ある一人区では自公
を中心とする与党対野党連合といった、中国の戦国時代における合従連衡を
想起させるような構図を軸に選挙戦が戦われました。残念ながらアベノミク
スの是非、そして、経済優先かそれとも社会保障や教育を優先するのか?そ
の財源は?といった論点に関しては、積極的な議論がなされぬまま、選挙戦
は終焉を迎えました。
この間のマスコミの論調をみても、また政治評論家とされる人々の発言を
聞いても、本当の意味での保守という言葉は殆ど理解されていないように感
じます。また、便宜的に言葉の上だけでも自民党を保守、共産党や社民党を
革新とすることももはや無理がありますし、実際、民進党や以前の民主党は
中道といった表現をしばしば用いています。もはや、改憲勢力=保守勢力
護憲勢力=革新勢力と断ずることはできませんし、保守という日本語の意味
からしてもそれは無理があると思います。
保守とは、1:正常な状態などを維持すること。2:古くからの伝統・習慣・
制度・社会組織・考え方などを尊重して、それらを保存したり、維持したり
すること。等とされ、保守の対義語は革新です。つまり、保守とは本来「伝
統=現状」を維持することを意味しますが、保守という言葉が単なる守旧派、
既得権益を守る人々と言う意味で用いられることも多く、また、欧州におい
て現存する王党派やオリンピックが行われたブラジルで勢力を盛り返してい
る王政復古派、および日本における復古的改革主義を保守と呼ぶべきなので
しょうか?
例えば、平安末期における源頼朝は当時においては間違いなく革新勢力で
あり、保守勢力であった平安貴族、そして、そこに取り込まれていった平家
一門との戦いこそが治承・寿永の乱いわゆる源平合戦であり、名古屋の生ん
だとされる政治的な天才であった源頼朝はこの戦いに勝利します。南北朝時
代の後醍醐天皇、そして足利尊氏は各々、延喜天暦の治および鎌倉時代初期
に軸足をおいた復古的改革主義勢力になると思います。織田信長は強烈な革
新勢力であり、宗教や伝統そういった部分を中心に今までの国体の多くを変
えてしまったわけであります。また、明治維新は間違いなく300年続いた江戸
幕府という保守勢力に対する革新勢力による勝利であったわけですが、大政
奉還、そして王政復古の形をとることで、復古的改革主義の形態をとってい
ます。では、戦後既に70年が過ぎ、焼け野原となった日本をそしてその国土
の6割を失い、日本人の価値観を大きく変えた第二次世界大戦、および太平洋
戦争を知らない日本人が大多数を占める今現在の我々が保守として考える古
くからの伝統・習慣・制度・社会組織・考え方とはいつの時代のものなので
しょうか?
それを受け、予定を若干変更し、本稿以降数稿にわたり保守とはなんであ
るか?その歴史や各国の国民のその意味の捉え方を含め考察していきたいと
思います。
この選挙戦や野党統一候補を語る上で、私はすぐに合従連衡を思い浮かべ
ましたので少しだけご紹介いたします。戦国七雄(秦、燕、趙、韓、魏、斉、
楚)のうち、西に位置する巨大な秦以外の六国が縦に同盟し、共同戦線で秦
に対抗すればおのずから勝利を得るだろうというのが合従説です。その最大
かつ史上最も有名なのが縦横家の蘇秦によるもので、彼はまず燕の文候に各
国をとりまとめて秦に対することを説き、承諾を得ると趙、韓、魏、斉、楚
の諸王を言葉巧みに説き伏せ、六国の合従を成立させ、蘇秦は同盟の総長か
つ六国の宰相をも兼ねました。この合従は一時的に強勢となりますが、中国
における初代皇帝が秦の始皇帝であったのがしめすように、最終的には徐々
に連衡家(代表的なのは張儀)が秦に対抗して合従する諸国に対し、秦と結
んで隣国を攻める利を説いて、合従から離脱させることに成功しています。
(次号に続く)
元衆議院議員 吉田つねひこ
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(2017年5月18日 記)
民進党愛知県第1区総支部長
元衆議院議員 吉田つねひこ