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vol.56 日本の医療制度を名実ともに世界一にするために~新設医科大学構想にもの申す~《第5回》

吉田つねひこ「政治が視えるメルマガ」の第56号です。
このメルマガでは、国会の流れ、政策の動き、私の活動などをお伝えします。

 

テーマ : 日本の医療制度を名実ともに世界一にするために
~新設医科大学構想にもの申す~
― 第5回 ―

~はじめに~
前回は、医療崩壊を食い止める観点から新設医科大学(以下、新設医大)
に関する私の国会での質問から課題や問題点を浮き彫りにし、続いて医療崩
壊を食い止めるための処方箋の一つを打ち出しましたが、今回も引き続き、
次なる処方箋を提示させていただきます。

■医療崩壊を防ぐ処方箋:その2
<医師免許制度の抜本改革-都道府県別免許制度>
現在の制度では、医師法第9~16条に規定されている医師国家試験(毎年
2月中旬ごろに施行)に合格し、医籍に登録をされると医師として患者の診
療を行うことが出来るようになります。日本は自由標榜性であるために、医
師自身の技量の判断により、何科を名乗っても良いことになっており、また
日本国内であれば(一部の外国でも)どこでも医師として患者の診療を行う
ことが出来ます。これこそが大学医局中心のヒエラルヒーと教授および医局
の人事権が弱体化した(加えて医師会の開業医に対する影響力の弱まった)
現在において、医師の偏在と各科の偏在を引き起こし、医療過疎および地域
医療の崩壊を招く主要因だと考えられています。今から記載する事はかなり
の劇薬で、特に開業医の先生方や御子弟には若干厳しい内容も含みますが、
あくまで医療を国家国民の財産として、そして国家戦略としての医療を考え
た上での一案に過ぎませんので、ご容赦ください。

その政策とは、おもいきって現在全国どこでも診療を行うことが出来る医
師免許を、卒業した大学の存在意義と成り立ちに沿って、年限を決めた上で、
診療可能地域を制限するという政策であり、これは大変有効に機能すると思
います。要は自治医大や産業医大の義務年限と同じです。私の想定する年限
は10年でその年限を経過すれば、全国で診療可能な医師免許に書き換えると
いう事になります。例えば、前述した田中角栄元首相の一県一医大構想で新
設された医学部の卒業生の場合、全員が10年間はその大学がある都道府県に
おいて医療に従事します。私立大学も例外としてはなりませんので、一部の
例外を除き、例えばある大学は特定の都道府県に特化して卒業生に医療に従
事してもらう。もしくはある大学は全国に卒業生を医師として送り出すため
に、日本を数ブッロク(例えば北海道、東北、東京、東京を除く関東甲信越、
東海北陸、関西、中国四国、九州のような)に分割して、そのブロック別に
一定数の卒業生を送り出し、都道府県との協議を行い、卒業生を振り分けて
いく等というルールを作る事になるでしょう。

勿論、いくら国家戦略だと言っても、行き過ぎた規制制度が日本の若い医
師や研究者そして医療の可能性を制限してはなりませんので、アカデミアと
しての機能を多く有し、国家の医療の基幹そして研究拠点となっている大学
等の卒業生(及び全ての大学の極めて優秀な人材)は例外とするしかありま
せん。それは例えば旧7帝国大学をはじめとした日本の医療と研究の中核と
なっている大学だと思います。この大学の取捨選択には過酷な競争が発生す
ると思います。それと共に、医療における研究拠点の集約は必須だと考えま
す。つまり米国をはじめとした先進諸国では国家戦略として医療や自然科学
に関する研究機関の機能とデータの集約を行っているのですが、日本の研究
の悪弊の一つとして、日本では至る所で同じような研究がおこなわれている
事実があります。勿論競争を促すという意味では非常に大事な事ですが、多
くの場合は人材やデータそして労力が分散してしまっているのが現状です。
つまり全国の医学部付属病院を(1)医療(特に政策医療)及び研究の基幹とな
る大学病院(2)優秀な臨床医を育て地域の医療を守っていく事に特化した大学
病院に二極化させ、研究費と人材及び研究機関を集約し強化していく戦略と
同時に進めるのも一考に値するのではないでしょうか。

■医療崩壊を防ぐ処方箋:その3
<医師免許制度の抜本改革-診療科の偏在と診療科の定員制(甲)>
医師の適正配置という観点から言えば、現状は医師の各地域における偏在
だけでなく、各診療科の偏在も大きな問題となっています。例えば外科医は
全体として減少傾向にあるだけでなく、40歳代の技術を有する外科医たちは、
過酷な勤務医の労働環境に耐えきれず開業する事も多くあります。また金銭
的な理由で勤務医を辞めるケースもあります。その際に彼らは自らの有する
技能を生かすことが出来るのでしょうか。答えはごく一部を除いて“NO”
です。多くの外科医を有する大きな外科病院に再就職する場合や肛門科を標
榜しての開業であれば、今までの技能は多少なりとも生きてきますが、驚く
べきことに豊富な臨床経験を有し、世界一の手術技能を持った日本の外科医
たちの多くは、外科に加えて(もしくはそれすらせずに)内科・胃腸科・整
形外科を標榜して開業し、しかも実際の診療の主体も内科・胃腸科・整形外
科となる事がほとんどです。医療資源の損失という意味ではソフト面での計
り知れないダメージという事になります。

他にも産婦人科や小児科などの医師はやはり、その過酷な労働環境や訴訟
などのリスクで、民主党政権の誕生による勤務医の労働環境の改善や外科・
産婦人科・小児科・救急医療の再建を最重点項目として医療制度改革を行う
まで減少の一途を辿ってきました。特に昨今は日本の若い医師や医師を目指
す若者たちが欧米で良くみられるように、低リスクもしくは低パフォーマン
スで高収入を得られる診療科を選択する傾向も増えてきています。こういっ
た状況下において、日本における自由標榜性は、医療が国家戦略として国民
の健康や命を守るために医療は存在するという前提であれば、大きなひずみ
を生む原因になっている訳です。

~次号に向けて~
次号では、上記の「処方箋:その3」での問題を改善解決するための唯一で
絶対な政策を始め、さらなる処方箋を展開して参ります。

(次号に続く)

元衆議院議員 吉田つねひこ

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(2016年6月2日 記)

元衆議院議員 吉田つねひこ

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