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vol.54 日本の医療制度を名実ともに世界一にするために~新設医科大学構想にもの申す~《第3回》

吉田つねひこ「政治が視えるメルマガ」の第54号です。
このメルマガでは、国会の流れ、政策の動き、私の活動などをお伝えします。

 

テーマ : 日本の医療制度を名実ともに世界一にするために
~新設医科大学構想にもの申す~
― 第3回 ―

~はじめに~
前号では、医師数と医療に対する満足度との関係について、わが国の医療
が世界的にも高い評価を受けているにも拘らず、日本国民の医療に対する満
足度が低い原因を考察するとともに、小泉改革によって我が国の医療崩壊が
引き起こされた真相を明らかにしました。今号では、医師数を増やせば医療
崩壊が防げる訳でないという理由を田中角栄内閣時代の無医大県解消構想の
理想と現状から明らかにし、さらに、文部科学省が考える東北地方への医学
部設置に関する方針について記述致します。

■田中角栄内閣での無医大県解消構想の理想と現実
前号に引き続き、医師数に関して考察します。日本独自の医療供給体制を
鑑みると、真の課題は医師数の不足ではなく、地域による医師の偏在と診療
科の偏在によるものであるのは明らかです。では、その解決策として、新設
医大は適切でしょうか。たとえ医師不足の地域や東日本大震災の被災地に新
設医大を創立しても、結果として医師は自分の生まれ育った地域や医師とし
てのキャリアアップを可能にする医療施設での勤務を望むでしょう。
加えて忘れてはならないのが、医師数を増やせば医療費も増大するという
事です。医師を育成するためには多額の税金を要します。それだけでなく、
医師数が増えれば医療費も当然増大するわけです。現在の概算医療費は既に
40兆円に迫っている事も忘れてはなりません。つまり医師数を増加させるの
であれば、現在の日本国の医療供給体制や人口動態を鑑み、二次医療圏など
の見直しも含めた国家戦略として、ある程度個人の職業選択の自由を犠牲に
してでも行うという政府の強い意志とグランドデザインが必要でしょう。
そもそも田中角栄元首相の一県一医大構想で新設された医学部の卒業生の
卒業後の動向を見れば明らかです。またこの構想が理想通りうまく機能すれ
ば、医療崩壊もくいとめられた可能性がありましたが、残念ながらそのよう
な結果にはなりませんでした。一県一医大構想とは私が生まれる前年にあた
る1973年に第2次田中角栄内閣の元で閣議決定された「経済社会基本計画」
に盛り込まれた構想で、当時医学部のなかった15県に医科大学(医学部)を
設置し、地域の医療に貢献させようとした構想です。田中元首相の思いをも
っと良く表現するとすれば「無医大県解消構想」の方がしっくりくるかもし
れません。ちなみにこの構想による医学部設置政策は「一県一医大政策」
「無医大県解消政策」と呼称されます。この政策の本質と狙いは何であった
のかをもう一度よく考えて、医師数の問題と新設医大の問題を考える必要が
あるでしょう。

■文部科学省の東北地方への医学部設置認可における方針について
この項では、医師不足が指摘されてより、俎上に上がっている新設医大の
現状に関して記述します。安倍政権で2013年12月東北地方に新設医大の開設
を進める閣議決定がなされました。民主党政権時代にも2010年6月頃に各紙新
聞の一面で、30年ぶりの医学部新設そして具体的に北海道医療大学、国際医
療福祉大、聖隷クリストファー大の三校の新設医大開設が既成事実であり、
更に成田市や東北地方にも更なる新設医大開設の可能性があるというような
報道がなされました。これに対し私は数回にわたり予算委員会や文部科学委
員会で質問をさせて頂きました(後述)。2010年当時は一部の議員の思いと
当事者である新設医大関係者の思いが先走っていた印象が強く、文部科学省
と厚生労働省は新設医大開設の無駄の部分をよく理解しており、現状通り、
各大学の定員増加を進めるべきと考えていました。今回の閣議決定を受けて
の文部科学省の東北地方への医学部設置認可における留意点(必要な条件整
備)を見てみましょう。

1) 震災後の東北地方の地域医療ニーズに対応した教育を行うこと(例:総合
診療や在宅医療、チーム医療等に関する教育、災害医療に関する教育、放射
線に係る住民の健康管理に関する教育等)

2) 教員や医師、看護師の確保に際し引き抜き等で地域医療に支障を来さない
ような方策を講じること(例:広く全国から公募を行うこと、既存の大学や
医療機関、地方公共団体等との提携により計画的な人材確保を行うこと、特
に人材が不足している地域や診療科の医師の採用には十分配慮すること等)

3) 大学と地方公共団体が連携し、卒業生が東北地方に残り地域の医師不足の
解消に寄与する方策を講じること(例:地域枠奨学金や入試枠を設定するこ
と等)

4) 将来の医師需給等に対応して定員を調整する仕組みを講じること(例:既
存の医学部の定員増と同様に、入学定員のうち一部を平成○年度までの臨時
定員とすること等)

※文部科学省資料より
となっています。また2010年当時の新聞報道等での医学部設置認可の条件は、
(1)既に看護や薬学などの学部がある(2)医療系の基礎科目の教官がいる(3)
実習先として地域の病院が活用可能、となっており、これはそれ以前に民主
党が挙げた、既に(1)看護学校を有する(2)病院を有する、という条件に沿っ
て俎上に挙がったものと思われます。

~次号に向けて~
次号では、実際に私が国会で行った質問から新設医大の課題や問題点を考え、
さらに、現状の医師数で医療崩壊を食い止めることはできないか考察いたし
ます。

(次号に続く)

元衆議院議員 吉田つねひこ

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(2016年4月17日 記)

元衆議院議員 吉田つねひこ

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